○前科・前歴と素行善良要件、国益適合要件

日本人、「永住者」の在留資格をもって在留する方又は特別永住者の配偶者や子は、永住許可に必要な素行善良要件独立生計要件を免除されますが、国益適合要件は求められます。
国益適合要件を満たすためには、「永住許可に関するガイドライン」上、罰金刑や懲役刑を受けておらず納税義務等公的義務を果たしていることが必要であるとされています。
よって、前科・前歴は素行善良要件のみならず、国益適合要件においても審査されます。

納税義務については、申請時に未申告・未納税のものがあったとしても、法定期限後に申告・納税することで、場合によってはフォローすることが可能ですが、前科・前歴の事実については抹消することができません。

1つでも前科・前歴があれば、直ちに素行善良要件や国益適合要件を満たさないという判断をされるわけではありませんが、事実として存在する以上は、永住許可申請の際、ひとつ残らず正直に申告し、深い反省の情を述べた上、二度とこのようなことを犯さない旨を具体的根拠をもって誓約する旨の書面を提出することが必要となります。

入国審査官は、永住許可申請の審査において、必ず前科照会を行いますので、隠すことはできないということを認識しておく必要があります。

罰金刑の場合であっても、罰金額(多額か少額か)、ひき逃げ事案かひき逃げ事案でない単純な交通違反か等によって、斟酌の度合いが異なります。
ひき逃げ事案の場合には、国益適合要件を満たさないとして不許可となるケースが多いです。

○入国在留歴の総チェック

永住許可申請においては、それまでの入国在留履歴は全てチェックされます。
また、現在の就労状況身分関係(同居の有無など)の実態についても全て確認されますので、もし、不利な点があるのであれば、慎重に検討の上、文書で合理的なフォローをする必要があります。

在留歴が「10年以上」に満たない者の取り扱いについて

在留歴が「10年以上」に満たない者、又は在留歴10年のうち就労資格若しくは居住資格への在留資格変更後「5年以上」に満たない者については、在留歴のみで判断するのではなく、申請人の在留状況家族状況日本への貢献度等その他の要素を総合的に考慮し、法定要件に適合していると判断し得る次のような案件については、特に配慮するとされています。

① 日本で出生した者又は親に同伴して入国した者で、義務教育の大半が我が国の学校教育法に基づく教育機関を終了しているもの
② 「特別永住者」又は「永住者」の在留の資格をもって在留していた者で、海外留学や病気等やむを得ない理由により再入国の許可の有効期間経過後に上陸を認められ、かつ、法律上定めれた在留資格のいずれかをもって在留しているもの
③ 配偶者又は親が永住許可相当と判断される場合の配偶者又は同一世帯に所属する子
④ 就労資格又は居住資格で在留中の者で、出国中に病気等やむを得ない理由により再入国許可の有効期間経過後に上陸を認められ、かつ出国前と同一の在留資格で在留しているもの